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『天守物語』
泉鏡花を読む
夫人 えゝ、人手には掛けますまい。其のかはり私も生きては居りません、お天守の塵、煤ともなれ、落葉に成つて朽ちませう。
図書 やあ、何のために貴女が、美しい姫の、この世にながらへておわすを土産に、冥土へ行くので
ござ
います。
夫人 否、私も本望でごぎいます、貴方のお手にかゝるのが。
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