検索結果詳細


 『湯島の境内』 青空文庫

早瀬 馬鹿な。お前のお母《っか》さんに礼を云うのよ。しかし世帯の事なんか、ちっとも心配しているんじゃない。
お蔦 じゃ何を鬱ぐんですよ。
早瀬 何という事はない、が、月を見な、時々雲も懸《かか》るだろう。星ほどにも無い人間だ。ふっと暗闇《やみ》にもなろうじゃないか。……いや、家内安全の祈祷《きとう》は身勝手、御不沙汰《ごぶさた》の御機嫌うかがいにおまいりしながら、愚痴《ぐち》を云ってちゃ境内で相済まない。……さあ、そろそろ帰ろう。(立ちかける。)

 45/205 46/205 47/205


  [Index]