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 『日本橋』 青空文庫

 却説、言うがごとく、清葉の看板は滝の家にただ一人である。母親がある。それは以前同じ土地に聞えた老妓で、清葉はその実、養女である。学校に通う娘が一人。これには表むき、おっかさん、とおおびらに自分を呼ばせて、誰に、遠慮も気づかいも無い。
 なお菓子が好きだと云う、三歳になる男の児の有ることを、前の条にちょっと言ったが、これは特に断って置く必要がある、捨児である。夜半に我が軒に棄てられたのを、拾い取って育てている。その児に乳母を選んで、附けて置く裕な身上。

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