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 『日本橋』 青空文庫

 なお水菓子が好きだと云う、三歳になる男の児の有ることを、前の条にちょっと言ったが、これは特に断って置く必要がある、捨児である。夜半に我が軒に棄てられたのを、拾い取って育てている。その児に乳母を選んで、附けて置く裕な身上。
 土蔵がある、土蔵には、何かの舞に使った、能の衣裳まで納まったものである。
 かつて山から出て来た猪が、年の若さの向う不見、この女に恋をして、座敷で逢えぬ懐中の寂しさに、夜更けて滝の家の前を可懐しげに通る、とそこに、鍋焼が居た。荷の陰で引飲けながら、フトその見事な白壁を見て、その蔵は?

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