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 『高野聖』 泉鏡花を読む

(貴僧、嘸お疲労、直にお休ませ申しませうか。)
(難有う存じます、未だ些とも眠くはござりません、先刻体を洗ひましたので草臥もすつかり復りました。)
(那の流れは甚麼病にでもよく利きます、私が苦労をいたしまして骨と皮ばかりに体が朽れましても、半日彼処につかつて居りますと、水々しくなるのでございますよ。尤も那のこれから冬になりまして山が宛然氷つて了ひ、川も崖も不残雪になりましても、貴僧が行水を遊ばした彼処ばかりは水が隠れません、然うしていきりが立ちます。

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