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 『春昼』 泉鏡花を読む

 妾を放て、然うすれば、魚に騎し、波を〓《ひら》いて去らむ、と云ふのを微吟して、思はず、襟にはら/\と涙が落ちる。目を〓《みは》つて、其の水中の木材よ、いで、浮べ、鰭ふつて木戸に迎へよ、と睨むばかりに瞻めたのでござるさうな。些と尋常事でありませんな。
 詩は唐詩選にでもありませうか。」
「どうですか。えゝ、何んですつて――夢に家門に入つて沙渚に上る。魂が沙漠をさまよつて歩行くやうね、天河落処長洲路、あはれぢやありませんか。

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