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『高野聖』 泉鏡花を読む
(那の流れは甚麼病にでもよく利きます、私が苦労をいたしまして骨と皮ばかりに体が朽れましても、半日彼処につかつて居りますと、水々しくなるのでございますよ。尤も那のこれから冬になりまして山が宛然氷つて了ひ、川も崖も不残雪になりましても、貴僧が行水を遊ばした彼処ばかりは水が隠れません、然うしていきりが立ちます。
鉄砲疵のございます猿だの、貴僧、足を折つた五位鷺、種々なものが浴みに参りますから其の足跡で崕の路が出来ます位、屹と其が利いたのでございませう。
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