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 『歌行燈』 従吾所好

 先刻から、あゝ、恁うと、口の酸くなるまで、機嫌を取るやうにして、私が和女の調子を取つて、よしこの一つ上方唄でも、何うぞ三味線の音をさしておくれ。お客様がお寂しげな、座敷が浮かぬ、お見やんせ、蝋燭の灯もけると、頼むやうにして聞かいても、知らぬ、知らぬ、と言通す。三味線は和女、禁物か。下手や言うて、知らぬ云うて、曲なりにもお座つき一つ弾けぬ芸妓が何処にある。

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