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『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径
「可い加減な事をいう、狂気《きちがい》の嘉吉以来だ。お前は悪く変なものに知己《ちかづき》のように話をするが、水潜りをするなんて、猫化けの怪談にも、ついに聞いた事はないじゃないか。」
「お前様もね、当前《あたりまえ》だあこれ、空を飛ぼうが、泳ごうが、活きた猫なら秋谷中私《わし》ら知己《ちかづき》だ。何も厭な事はねえけんど、水ひたしの毛がよれよれ、前足のつけ根なぞは、あか膚よ。げっそり骨の出た死骸でねえかね。」
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