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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 訓導は打棄《うっちゃ》るように、
 「何だい、骸か。」
 「何だ死骸か、言わっしゃるが、死骸だけに厭なこんだ。金壺眼を塞がねえ。その人が毬を取ると、三毛の斑《ぶち》が、ぶよ、ぶよ、一度、ぷくりと腹を出《だ》いて、目がぎょろりと光ッたけ。其処ら鼠色の汚《きたね》え泡だらけになって、どんみりと流れたわ、水とハイ摺々《すれすれ》での――その方は岸へ上って、腰までずぶ濡れの衣《きもの》を絞るとって、帽子を脱いで仰向けにして、その中さ、入れさしった、傍で見ると、紫もありゃ黄色い糸もかがってある、五色の――手毬は、さまで濡れてはいねえだっけよ。」

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