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 『高野聖』 泉鏡花を読む

(貴僧、申せば何でも出来ませうと思ひますけれども、此人の病ばかりはお医者の手でも那の水でも復りませなんだ、両足が立ちませんのでございますから、何を覚えさしましても役には立ちません。其に御覧なさいまし、お辞儀一ツいたしますさへ、あの通り大儀らしい。
 ものを教えますと覚えますのに嘸骨が折れて切なうござんせう、体を苦しませるだけだと存じて何にも為せないで置きますから、段々、手を動かす働も、ものをいふことも忘れました。其でも那の、謡が唄へますわ。二ツ三ツ今でも知つて居りますよ。さあ御客様に一ツお聞かせなさいましなね。)

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