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 『春昼』 泉鏡花を読む

「大きな、ハツクサメをすると煙草を落した。額こツつりで小児は泣き出す、負けた方は笑ひ出す、涎と何んかと一緒でござらう。鼻をつまんだ禅門、苦々しき顔色で、指を持余した、塩梅な。
 これを機会に立去らうとして、振返ると、荒物屋と葭簀一枚、隣家が間に合はせの郵便局で。其処の門口から、すらりと出たのが例の其人。汽車が着いたと見えて、馬車、車がら/\と五六台、それを見に出たものらしい、郵便局の軒下から往来を透かすやうにした、目が、ばつたり客人と出逢つたでありませう。

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