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『春昼』 泉鏡花を読む
これを機会に立去らうとして、振返ると、荒物屋と葭簀一枚、隣家が間に合はせの郵便局で。其処の門口から、すらりと出たのが例の其人。汽車が着いたと見えて、馬車、車がら/\と五六台、それを見に出たものらしい、郵便局の軒下から往来を透かすやうにした、目が、ばつたり客人と出逢つたでありませう。
心ありさうに、然うすると直ぐに身を引いたのが、隔ての葭簀の陰になつて、顔を背向けもしないで、其処で向直つて此方を見ました。
軒下の身を引く時、目で引つけられたやうな心持がしたから、此方も又葭簀越に。
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