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『外科室』 青空文庫
聞くがごとくんば、伯爵夫人は、意中の秘密を夢現《ゆめうつつ》の間に人に呟かんことを恐れて、死をもてこれを守ろうとするなり。良人《おつと》たる者がこれを聞ける胸中いかん。この言《ことば》をしてもし平生にあらしめば必ず一条の紛紜《ふんぬん》を惹き起こすに相違なきも、病者に対して看護の地位に立てる者はなんらのこともこれを不問に帰せざるべからず。しかもわが口よりして、あからさまに秘密ありて人に聞かしむることを得ずと、断乎《だんこ》として謂い出だせる、夫人の胸中を推すれば。
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