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 『義血侠血』 青空文庫

「はい、ちと遠方でございますと言いなよ。これ、長松、ここがの、金沢の兼六園といって、百万石のお庭だよ。千代公《ちょんこ》のほうは二度目だけれど、おまえははじめてだ。さあよく見物しなよ」
 渠は抱きし猿を放ち遣りぬ。
 折からあなたの池のあたりに、マッチの火のぱっと燃えたる影に、頬被りせる男の顔は赤く顕われぬ。黒き影法師も両三箇《ふたつみつ》そのかたわらに見えたりき。因果娘は偸視《すかしみ》て、

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