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 『春昼』 泉鏡花を読む

 軒下の身を引く時、目で引つけられたやうな心持がしたから、此方も又葭簀越に。
 爾時は、総髪の銀杏返で、珊瑚の五分珠の一本差、髪の所為か、いつもより眉が長く見えたと言ひます。浴衣ながら帯には黄金鎖を掛けて居たさうでありますが、揺れて其の音のするほど、此方を透すのに胸を動かした、がさ、葭簀を横にちらちらと霞を引いたかと思ふ、是に眩くばかりになつて、思はず一寸会釈をする。

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