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 『春昼』 泉鏡花を読む

 爾時は、総髪の銀杏返で、珊瑚の五分珠の一本差、髪の所為か、いつもより眉が長く見えたと言ひます。浴衣ながら帯には黄金鎖を掛けて居たさうでありますが、揺れて其の音のするほど、此方を透すのに胸を動かした、顔がさ、葭簀を横にちらちらと霞を引いたかと思ふ、是に眩くばかりになつて、思はず一寸会釈をする。
 向うも、伏目に俯向いたと思ふと、リン/\と貴下、高く響いたのは電話の報知ぢや。
 是を待つて居たでございますな。

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