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『高野聖』 泉鏡花を読む
不思議や、唄つた時の白痴の声は此話をお聞きなさるお前様は固よりぢやが、私も推量したとは月鼈雲泥、天地の相違、節廻し、あげさげ、呼吸の続く処から、第一其の清らかな涼しい声といふ者は、到底此の少年の咽喉から出たものではない。先づ前の世の此白痴の身が、冥土から管で其のふくれた腹へ通はして寄越すほどに聞えましたよ。
私は畏つて聞き果てると、膝に手をついたツ切り何うしても顔を上げて其処な男女を見ることが出来ぬ、何か胸がキヤ/\して、はら/\と落涙した。
婦人は目早く見つけたさうで、
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