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 『夜叉ヶ池』 青空文庫

学円 しばらく、(声を掛け、お百合を中に晃と立並ぶ。)その返答は、萩原からはしにくかろう。代って私《わし》が言う。――いかにも、お百合さんは村の生命《せいめい》じゃ。それなればこそ、華冑《かちゅう》の公子、三男ではあるが、伯爵の萩原が、ただ、一人のしさのために、一代鐘を守るではないか――既に、この人を手籠《てご》めにして、牛の背に縄目の恥辱《ちじょく》を与えた諸君に、論は無益と思うけれども、衆人環《めぐ》り視《み》る中において、淑女の衣《ころも》を奪うて、月夜を引廻すに到っては、主、親を殺した五逆罪の極悪人を罪するにも、洋の東西にいまだかつてためしを聞かんぞ!

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