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 『高野聖』 泉鏡花を読む

 急にものもいはれなんだが漸々、
(唯、何、変つたことでもござりませぬ、私も嬢様のことは別にお尋ね申しませんから、貴女も何にも問うては下さりますな。)
 と仔細は語らず唯思ひ入つて然う言うたが、実は以前から様子でも知れる、金釵玉簪をかざし、蝶衣を纏うて、珠履を穿たば、正に驪山に入つて、相抱くべき豊肥妖艶の人が、其男に対する取廻しの優しさ、隔なさ、深切さに、人事ながら嬉しくて、思はず涙が流れたのぢや。

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