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 『五大力』 従吾所好

 黒のらしい、紋着の羽織が細りと靡いて、投遣りな褄は、船板塀に山茶花が咲く……
 手首の真なのもすつきり見えた……
 あゝ、船の中空に、蒔絵を研出したやうな月が、……と見れば、居まはりの蔵、物置も濡色が黒く颯と照つて、ばら/\とある枯柳も、其処此処にすら/\と光つた、土手を、ちらりと小提灯が一つ通る。

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