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 『日本橋』 青空文庫

 初夜も過ぎた屋根越に、向う角の火災保険の煉瓦に映る、縁結びの紅い燈は、あたかも奥庭の橋に居て、御殿の長廊下を望んで、障子越の酒宴を視める光景! 島田の影法師が媚めくほど、なお世に離れた趣がある。
 偶にこぼれて出て来るのは、小姓梅之助に手を曳かるる腰元の青柳か、密と外して酔ざましの椎茸髱。いずれも人目を忍ぶ色の、悪くすると御手討もの。巡査と対向に立ったのなんぞ、誰も立停まって聞くものは無い。

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