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 『歌行燈』 従吾所好

 女中は、これよりさき、支いて突立つた其の三味線を、次の室の暗い方へ密と押遣つて、がつくりと筋が萎えた風に、折重なるまで摺寄りながら、黙然で、燈の影に水の如く打揺ぐ、お三重の背中を擦つて居た。
「島屋の亭が、そんな酷い事をしをるかえ。可いわ、内の御隠居に然う言うて、沙汰をして上げよう。心安う思うておいで、真個にまあ、よう和女、へ疵もつけんの。」

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