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『日本橋』 青空文庫
偶にこぼれて出て来るのは、小姓梅之助に手を曳かるる腰元の青柳か、密と外して酔ざましの椎茸髱。いずれも人目を忍ぶ色の、悪くすると御手討もの。巡査と対向に立ったのなんぞ、誰も立停まって聞くものは無い。
夜は、間遠いので評判な、外濠電車のキリキリ軋んで通るのさえ、池の水に映って消える長廊下の雪洞の行方に擬う。
が、名を憚った男の、低い声に、(ああん。)と聞えぬ振して、巡査が耳を傾けたのは、わざとらしく意地悪く見えた。
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