検索結果詳細
『五大力』
従吾所好
あゝ、船の中空に、蒔絵を研出したやうな月が、……と見れば、居まはりの蔵、物置も濡色が黒く颯と照つて、ばら/\とある枯柳も、其処此処にすら/\と光つた、土手を、ちらりと小提灯が一つ通る。
屋根と屋根とかさなり掛つて星を鏤〈ちりば〉めた蒼空遙に、靄を破る鉄〈くろがね〉の天の柱かと見る工場の煙突さへ、月の面へぼつと吐く……短かな煙の
白
いのが、船の婦の立姿、まるで、
白
粉の刷毛に見えた。
504/1139
505/1139
506/1139
[Index]