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 『二、三羽――十二、三羽』 青空文庫

 何も、肯分けるのでもあるまいが、言《ことば》の下に、萩の小枝を、花の中へすらすら、葉の上はさらさら……あの撓々《たよたよ》とした細い枝へ、塀の上、椿の樹からトンと下りると、下りたなりにすっと辷って、ちょっと末《うら》を余して垂下る。すぐに、くるりと腹を見せて、葉裏を潜ってひょいと攀じると、また一羽が、おなじように塀の上からトンと下りる。下りると、すっと枝に撓って、ぶら下るかと思うと、飜然《ひらり》と伝う。また一羽が待兼ねてトンと下りる。一株の萩を、五、六羽で、ゆさゆさ揺って、盛《さかり》の時は花もこぼさず、嘴で銜えたり、尾で跳ねたり、横顔で覗いたり、かくして、裏おもて、虫を漁りつつ、滑稽《おど》けてはずんで、ストンと落ちるかとすると、羽をひらひらと宙へ踊って、小枝の尖《さき》へひょいと乗る。
 上さんがこれを聞いて、莞爾《にっこり》して勧めた。
 「鞦韆《ぶらんこ》を拵えてお遣んなさい。」

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