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『高野聖』 泉鏡花を読む
(まあ、いま宿を寝かします、おゆつくりなさいましな。戸外へは近うござんすが、夏は広い方が結句宜うございませう、私どもは納戸へ臥せりますから、貴僧は此処へお広くお寛ぎが可うござんす、一寸待つて。)といひかけて衝と立ち、つか/\と足早に土間へ下りた、余り身のこなしが活発であつたので、其の拍子に黒髪が先を巻いたまゝ項へ崩れた。
鬢をおさへて戸につかまつて、戸外を透かしたが、独言をした。
(おや/\さつきの騒ぎで櫛を落したさうな。)
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