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 『春昼』 泉鏡花を読む


 降らうも知れぬ。日向へが出て居る時は、雨を持つといふ、来がけに二度まで見た。
 で、雲が被つて、空気が湿つた所為か、笛太鼓の囃子の音が山一ツ越えた彼方と思ふあたりに、蛙が喞くやうに、遠いが、手に取るばかり、然も沈んでうつゝの音楽のやうに聞えて来た。靄で蝋管の出来た蓄音機の如く、且つ遙に響く。

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