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 『夜叉ヶ池』 青空文庫

晃 煩《うるさ》く薮蚊《やぶっか》が押寄せた。裏縁で燻《いぶ》してやろう。(納戸、背後《うしろ》むきに山を仰ぐ)……雲の峰を焼落《やきおと》した、三国ヶ岳は火のようだ。西は近江《おうみ》、北は加賀、幽《かすか》に美濃《みの》の山々峰々、数万《すまん》の松明《たいまつ》を列《つら》ねたように旱《ひでり》の焔《ほのお》で取巻いた。夜叉《やしゃ》ヶ池へも映るらしい。ちょうどその水の上あたり、宵の明星の色さえい。……なかなか雨らしい影もないな。

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