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 『春昼』 泉鏡花を読む

 あの音もさ、面白可笑しく、此方も見物に参る気でもござると、ぢつと落着いては居られない程、浮いたものでありますが、さて恁う、かけかまひなしに、遠ざかつて居りますと、世を一ツ隔てたやうに、寂しい、陰気な、妙な心地がいたすではありませんか。」
「真箇ですね。」
「昔、井戸を掘ると、地の下に犬鶏の鳴く音、人声、牛車の軋る音などが聞えたといふ話があります。それに似て居りますな。

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