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 『春昼』 泉鏡花を読む

 されば瓦を焚く竈の、屋の棟よりも高いのがあり、主の知れぬ宮もあり、無縁になつた墓地もあり、頻に落ちる椿もあり、田には大な鰌もある。
 あの、西南一帯の海の潮が、浮世の波に帆を乗せて、此しばらくの間に九十九折ある山の峡を、一ツづゝ湾にして、奥まで迎ひに来ぬ内は、いつまでも村人は、むかう向になつて、ちらほらと畑打つて居るであらう。

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