検索結果詳細


 『春昼』 泉鏡花を読む

 あの、西南一帯の海の潮が、浮世の波に白帆を乗せて、此しばらくの間に九十九折ある山の峡を、一ツづゝ湾にして、奥まで迎ひに来ぬ内は、いつまでも村人は、むかう向になつて、ちらほらと畑打つて居るであらう。
 丁どいまの曲角の二階家あたりに、屋根の七八ツ重つたのが、此の村の中心で、それから峡の方へ飛々にまばらになり、手と二三町が間人家が途絶えて、却つて折曲つた此の小路の両側へ、又飛々に七八軒続いて、それが一部落になつて居る。

 53/628 54/628 55/628


  [Index]