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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 あの、薄煙、あの、靄の、一際夕暮を染めた彼方此方は、遠方《おちかた》の松の梢も、近間《ちかま》なる柳の根も、いずれもこのの淀んだ処で。畑《はた》一つ前途《ゆくて》を仕切って、縦に幅広く気《すいき》が立って、小高い礎を朦朧と上に浮かしたのは、森の下闇で、靄が余所よりも判然《はっきり》と濃くかかった所為で、鶴谷が別宅のその黒門の一構《ひとかまえ》。

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