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 『義血侠血』 青空文庫

「もう二時だ。はてなあ!」
 糸は思案に余って、歩むべき力も失せつ。われにもあらで身を靠《もた》せたるは、未央柳《びおうりゅう》の長く垂れたる檜の板塀のもとなりき。
 こはこれ、公園地内に六勝亭と呼べる席貸《せきが》しにて、主翁《あるじ》は富裕の隠居なれば、けっこう数寄を尽くして、営業のかたわらその老いを楽しむところなり。

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