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 『春昼』 泉鏡花を読む

 両方谷、海の方は、山が切れて、真中の路を汽車が通る。一方は一谷落ちて、それからそれへ、山又山、次第に峰が重なつて、段々雲霧が深くなります。処々、山の尾が樹の根のやうに集つて、広々とした青田を抱へた処もあり、炭焼小屋を包んだ処もございます。
 其処で、此の山伝ひの路は、崕の上を高い堤防を行く形、時々、島や帆の見晴しへ出ますばかり、あとは生繁つて真暗で、今時は、然までにもありませぬが、草が繁りますと、分けずには通られません。

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