検索結果詳細


 『春昼』 泉鏡花を読む

 其処を山続きの留りにして、向うへ降りる路は、又此の石段のやうなものではありません。わづかの間も九十九折の坂道、嶮しい上に、〓《なまじつ》か石を入れたあとのあるだけに、爪立つて飛々に這ひ下りなければなりませんが、此の坂の両方に、五百体千体と申す数ではない。それは/\数へ切れぬくらゐ、いづれも一尺、一尺五寸、御丈三尺といふのはない、小さな石仏がすく/\並んで、最も長い年月、路傍へ転げたのも、倒れたのもあつたでありませうが、さすがに跨ぐものはないと見えます。もたれなりにも櫛の歯のやうに揃つてあります。

 548/628 549/628 550/628


  [Index]