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『雛がたり』 青空文庫
――ええ、餅屋の婿さんは知りませんが、向う側のあの長い塀、それ、柳のわきの裏門のありますお邸は、……旦那、大財産家でございましてな。つい近い頃、東京から、それはそれは美しい奥さんが見えましたよ――
何とこうした時は、見ぬ恋にも憧憬《あこが》れよう。
欲《ほし》いのは――もしか出来たら――偐紫《にせむらさき》の源氏雛、姿も国貞の錦絵ぐらいな、花桐《はなぎり》を第一に、藤の方、紫、黄昏、桂木、桂木は人も知った朧月夜《おぼろづきよ》の事である。
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