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『五大力』
従吾所好
其の日、能楽堂で、三番目の熊野を勤めて、人が車を、車を、と云ふものを、何を、で老人、天気は可し、尤も杖の味はまだ知らない、薄目を仰向けに、夕日で酔うた顔をして、日和下駄をかた/\、信玄袋を提げて、中古な、袖外套で一人で帰つた。九段坂の下口〈おりぐち〉で、横倒れに……ステンとまゐつた、と云ふんだがね。」
茶飯屋はぎよつとする、此も老たり。
「はあ、其は、お危い。」
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