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『高野聖』 泉鏡花を読む
「翌日又正午頃、里近く、瀧のある処で、昨日馬を売りに行つた親仁の帰りに逢うた。
丁度私が修行に出るのを止して孤家に引返して、婦人と一所に生涯を送らうと思つて居た処で。
実を申すと此処へ来る途中でも其の事ばかり考へる、蛇の橋も幸いになし、蛭の林もなかつたが、道が難渋なにつけても、汗が流れて心持が悪いにつけても、今更行脚も詰らない。紫の袈裟をかけて、七堂伽藍に住んだ処で何程のこともあるまい、活仏様ぢやというて、わあ/\拝まれれば人いきれで胸が悪くなるばかりか。
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