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『歌行燈』
従吾所好
と調子が緊つて、
「……ひきあげ給へと約束し、一の利剣を抜持つて、」
と扇をきりゝと袖を直す、と手練〈てだれ〉ぞ見ゆる、自から、衣紋の位に年長けて、瞳を定めた其の顔〈かんばせ〉。硝子戸越に月さして、霜の川浪照添ふ俤。膝立据ゑた畳にも、燭台の花颯と流るゝ。
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