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『春昼』
泉鏡花を読む
入り口はまだ月のたよりがございます。樹の下を、草を分けて参りますと、処々窓のやうに山が切れて、其処から、松葉掻、枝拾ひ、じねんじよ穿が谷へさして通行する、下の村へ続いた路のある処が、彼方此方に幾干もございます。
それへ出ると、何処でも広々と見えますので、最初左の浜庇、今度は右の茅の屋根と、二三箇処、其切目へ出て、覗いたが、何処にも、祭礼らしい処はない。海は明く、谷は煙つて。」
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