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『高野聖』 泉鏡花を読む
真中に先づ鰐鮫が口をあいたやうな先のとがつた黒い大巌が突出て居ると、上から流れて来る颯と瀬の早い谷川が、之に当つて両に岐れて、凡そ四丈ばかりの瀧になつて哄と落ちて、又暗碧に白布を織つて矢を射るやうに里へ出るのぢやが、其巌にせかれた方は六尺ばかり、之は川の一幅を裂いて糸も乱れず、一方は幅が狭い、三尺位、この下には雑多な岩が竝ぶと見えて、ちら/\ちら/\と玉の簾を百千に砕いたやう、件の鰐鮫の巌に、すれつ、縺れつ。」
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