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 『海神別荘』 華・成田屋

侍女三  まあ、お勇ましい。
公子  (少し俯向く)勇ましいではない。家畑を押流して、浦のもの等は迷惑をしはしないか。
僧都  いや、いや、黒潮と赤潮が、密と爪弾きしましたばかり。人命を断つほどではございませなんだ。もっとも迷惑をせば、いたせ、娘の親が人間同士の間(なか)でさえ、自分ばかりは、思い懸けない海の幸を、黄金(こがね)の山ほど〓(つかみ)みましたに因って、他の人々の難渋どときはいささかも気にも留めませぬに、海のお世子(よとり)であらせられます若様。人間界の迷惑など、お心に掛けさせますには毛頭当りませぬ儀でございます。

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