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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 訓導は教うる如く、
 「第一が悪い。あの、また真蒼な、草の汁のようなものが飲めるものかい。」
 「そうかね――はあ、まず何にしろだ。此方《こっち》から頼めばとって、昼間掃除に行くのさえ、厭がります空屋敷じゃ。其処が望み、と仰有るに、お住居下さればその部屋一ツだけも、屋根の草がのうなって、立腐れが保つこんだで、此方《こっち》は願ったり、叶ったり、本家の旦那もさぞ喜びましょうが、尋常体《なみてい》の家でねえ。あの黒門を潜らっしゃるなら、覚悟して行かっせえ、可うがすか、と念を入れると、

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