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 『義血侠血』 青空文庫

 灯影《ひかげ》は縁を照らして、跫音は近づけり。白糸はひたと雨戸に身を寄せて、何者か来たると〓《うかが》いぬ。この家の内儀なるべし。五十ばかりの女は寝衣姿《ねまきすがた》のしどけなく、真鍮《しんちゅう》の手燭を翳して、覚めやらぬ眼を〓《みひら》かんと面を顰めつつ、よたよたと縁を伝いて来たりぬ。死骸に近づきて、それとも知らず、
「あなた、そんな所《とこ》に寝て……どうなすっ。……」
 燈《あかし》を差し向けて、いまだその血に驚く遑《いとま》あらざるに、

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