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 『五大力』 従吾所好

 婆々どの心配を掛けて済まん、と言ふ心持の、あの、気の折れ方が情ない。身体が弱つた証拠だつてね、叔母御が言ふのも道理です。
 が、そんな口を利いたくらゐ、帰つた当座は、一時、正気のやうだつけ。少時して、又茫と成つて寝た……其のまんま、すや/\と鼾を掻いて居るんださうだ。
 胸どき/\で、其の容体を聞く処へ、五人七人、袴、羽織をさら/\と遣つて、各々〈めい/\〉羽二重の紋着の、紋ほどは年紀の違はぬ……男振も揃つた血気盛り。いづれも浅草蔵前の大師匠取立てで売出し花形のお役者連が、粒を揃へて見舞に来た、皆能楽堂を済ました帰りで。

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