検索結果詳細
『婦系図』 青空文庫
「ありゃ君、もう来なくッても可いよ。余り失礼な奴だと、母様が大変感情を害したからね、君から断ってくれたまえ。」
と真面目で云って、衣兜《かくし》から手巾《ハンケチ》をそそくさ引張出し、口を拭《ふ》いて、
「どうせ東京の魚だもの、誰のを買ったって新鮮《あたらし》いのは無い。たまに盤台の中で刎《は》ねてると思や、蛆《うじ》で蠢《うご》くか、そうでなければ比目魚《ひらめ》の下に、手品の鰌《どじょう》が泳いでるんだと、母様がそう云ったっけ。」
565/3954
566/3954
567/3954
[Index]