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 『二、三羽――十二、三羽』 青空文庫

 が、一夏《ひとなつ》縁日で、月見草を買って来て、萩の傍《そば》へ植えた事がある。夕月に、あの花が露を香《にお》わせてぱッと咲くと、いつもこの黄昏《たそがれ》には、一時《ひととき》留り餌に騒ぐのに、ひそまり返って一羽だって飛んで来ない。はじめは怪しんだが、二日め三日めには心着いた。意気地《いくじ》なし、臆病。烏瓜《からすうり》、夕などは分けても知己《ちかづき》だろうのに、はじめて咲いた月見草の黄色な花が可恐《こわ》いらしい……可哀相《かわいそう》だから植替えようかと、言ううちに、四日めの夕暮頃から、漸《や》っと出て来た。何、一度味をしめると飛ついて露も吸いかねぬ。

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