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 『歌行燈』 従吾所好

 捻平はフト車の上から、頸〈うなじ〉の風呂敷包のまゝ振向いて、何か背後〈うしろ〉へ声を掛けた。……と同時に弥次郎兵衛の車も、丁度其の唄ふ声を、町の中で引挟んで、がつきと留まつた。が、話の意味は通ぜずに、其のまゝ捻平のが又曳出す……後の車も続いて駈け出す。と二台が一寸〈ちょつと〉摺れ/\に成つて、すぐ旧〈もと〉の通り前後〈あとさき〉に、流るゝやうな月夜の車。

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