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 『高野聖』 泉鏡花を読む

(何をしてござる、御修行の身が、この位の暑で、岸に休んで居さつしやる分ではあんめえ、一生懸命に歩行かつしやりや、昨夜の泊から此処まではたつた五里、もう里へ行つて地蔵様を拝まつしやる時刻ぢや。
 何ぢやの、己が嬢様に念が懸つて煩悩が起きたのぢやの。うんにや、秘さつしやるな、おらが目はくツても、白いか黒いかはちやんと見える。
 地体並のものならば、嬢様の手が触つて那の水を振舞はれて、今まで人間で居よう筈はない。

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